厚生労働省は2月21日、「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」を開催し、介護職員によるたんの吸引など医行為行為の試行事業について中間報告を公表した。報告は施行事業の講師役となった医療職と受講した介護職双方からアンケートを回収したもの。
2010年11月~12月にかけて実施された不特定多数の利用者を対象とした基本研修では、7団体から推薦された141名の介護職を対象に50時間の講義や演習が行われ、知識の確認のための筆記試験は90分で50問出題され、研修参加者の約9割が介護福祉士の有資格者だった。筆記試験の成績下位者については個別再学習後、指導者からの口頭試問後に今年1月以降の実地指導へ進んだ。
介護職員から「講義時間が長い」と評価されたのは、たんの吸引と経管栄養の"事前説明(声かけ)と同意、事後説明"。「短い」とされたのは"人工呼吸器と吸引、消化器のしくみとはたらき"などで、理解度をたずねた質問でも理解できたという回答の割合が低かった。いずれも講義時間は全て各1時間だった。
指導者は指導者講習を受けた医師14名、看護師88名の計102名が科目別に講義したが、指導者側からも"人工呼吸器と吸引"は講義時間が短いと指摘があり、一方で「医療の倫理、保健医療に関する制度」などの項目は「まったく不要」「どちらかといえば不要」という声もあがった。
検討会では、ケアごとに実地研修の実施率に差があることが課題として指摘された。2月14日時点で、「鼻腔内のたんの吸引20回以上」24.1%、「口腔内のたんの吸引」12.4%、「胃ろう・腸ろうによる経管栄養」10.2%の割合で「実習未着手」だったのに対し、 「気管カニューレ内のたんの吸引」は59.6%、「経鼻経管栄養」は42.2%が未着手 と、他のケアより現場での実習が未実施であることが問題視された。同省によると、「気管カニューレ内のたん吸引」などを必要とする利用者が少ないため、現場での実施研修対象者がいないと回答した。
出席した平林勝政委員(國學院大法科大学院長)は、気管カニューレ内のたんの吸引、経鼻経管栄養の対象者が少なく研修を実施する場が少ないなら、実習と教育の場を切り離してはどうか」と提案した。
川村佐和子委員(聖隷クリストファー大学教授)は、「今すぐに全部できなければダメと、いきなり100%を求めるのではなく、段階的に教えていけばよい」と発言。
黒岩祐治委員(ジャーナリスト・国際医療福祉大大学院教授)は、「家族でも行っていることを早くできるように検討しているのがこの検討会。介護職への医行為解禁は"規制緩和"だ。日本では医師が頂点に立ち、看護婦も全てその指示で動く業務独占だが、その考えをもう変えて必要な人に必要な処置を早くしてあげるようにしましょうということ」と再三、同検討会で力説しているスピード化を訴えた。
これに対し三上裕司委員(日本医師会常任理事)は、「介護職の中でもこうした研修を修了した者しか医行為ができないというなら業務独占にあたり、それはいわゆる規制緩和ではなく"規制強化"ではないか」と発言。
他の委員からも介護職への医行為解禁は、2010年6月に閣議決定されていることから、"規制緩和"であると支持する声があがり、今回の中間報告をもとにさらに審議を進めることで閉幕となった。
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