厚生労働省は12月22日、「第8回今後の介護人材養成のあり方に関する検討会」を開催し、介護福祉士の養成課程とキャリアパスについて骨子案を示した。介護福祉士の国家試験受験要件に検討されている実務者研修(6カ月研修)が600時間から450時間に短縮されたことや、ヘルパー1級と介護職員基礎研修、実務者研修(6カ月研修)の一本化をめぐり、現場の負担軽減を望む出席委員らからは大筋で了承を得たが、突然の時間数の縮減提案にとまどう意見も相次いだ。
「実務経験ルートの実務者研修(6カ月研修)は、これまで600時間といっていたのが突然450時間に減り、学校での養成ルートで学ぶ2年過程の1,800時間と同等内容だと会議冒頭で説明があったが、どういった根拠なのか」と開口一番、不信感をあらわにしたのは、石橋真二委員(日本介護福祉士会会長)。
田中委員(社団法人日本介護福祉士養成施設協会副会長)も、「医療的ケアなど研修の中身は増えているのに時間が減っているのが理解できない」と述べ、是枝委員(大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科教授)は、「(研修時間の短縮は)教育よりも働かせるといった、介護福祉士養成というより"単なる労働者"のイメージ」とピシャリ。「450時間の研修でどの程度の仕事ができるのか、45時間のスクーリング(通学)で何にスポットをあてて学ばせるのか、到達点をきちんと掲げるべき」と指摘した。
藤井委員(日本社会事業大学専門職大学院准教授)は、「現にこれまでの600時間では介護職員が負担を感じて、介護福祉士の人材確保が難しいのは事実。私は昨夜も21時まで介護職員の研修を指導していたが質の格差があり、介護福祉士の質を担保するにはハードルを高くする必要があると感じた。ただ、バナナのたたき売りのように研修時間を減らすことで現場の理解を得られるならやむを得ない」と妥協する姿勢を見せた。
樋口委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長)は、「先日、厚労省が社会保障審議会介護保険部会でまとめた制度改正の見直し案では、要支援者・軽度の要介護者を給付から外すことも検討事項として記載されているが、それが通れば介護福祉士の研修カリキュラムの内容も大きく影響するだろう。厚労省は、よく考えて今後の国会審議以降を進めてほしい」と突きつけた。
また、ヘルパー1級と介護職員基礎研修、実務者研修(6カ月研修)の一元化について、因委員(日本ホームヘルパー協会会長)は、「ヘルパー歴20年の立場から言わせてもらうと、ヘルパー2級研修を介護職員の導入研修(初任者研修)とすると記載されているが、個別の訪問介護による在宅と集団介護をしている施設では介護でも大きな違いがある」と、単純に研修を一本化することでヘルパーの質の変化を危惧した。またヘルパー1級と介護職員基礎研修が2012年度に一本化する記載については、現在トータルで360時間の研修を行っているヘルパー1級が介護職員基礎研修500時間の中に"吸収される"ことを事務局に確認した。
ヘルパー研修の一本化を危惧した因委員の意見に続いた河原委員(日本介護クラフトユニオン政策顧問)は「私もヘルパー2級を持っているが在宅を意識したイメージだ」と述べ、「過去のヒアリングでは現場から研修受講への時間とお金がなく、賃金にどのように反映するか疑問視する声が相次いだ。現場の介護職が"これなら頑張れるぞ"という必要最少限のカリキュラムを検討すべき」と訴えた。
また、中尾委員(全国ホームヘルパー協議会会長)から「現場では、人材養成制度の見直しが開始される2012年までに介護福祉士を受けてしまおうという声が多い」と告げられると、委員らの間には失笑が広がった。
このほか、介護職員に占める介護福祉士を5割以上とすることを掲げる事務局側からは、ヘルパー2級研修修了者へのアンケート調査結果が示された。研修修了者のうち、50歳代の受講者が全体の4割近くを占めたが「今後、介護福祉士を習得したい」と回答した人は約3割にとどまり、理由として「自分の年齢を考えると必要性を感じない」が半数以上に上った。その結果を踏まえて出席委員からは「労働者と(介護福祉士という)専門職を、別々にとらえて確保することを検討しては」といった意見も出された。
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