アルコールの高摂取は、心房細動の発症リスクを高めるとの研究結果を筑波大水戸地域医療教育センター内分泌代謝・糖尿病内科の曽根博仁教授らの研究グループがまとめ、1月25日付の米医学誌「Journal of the American College of Cardiology」に発表した。摂取量と発症リスクには、直線的な比例関係が見られたとし、児玉暁研究員は「適度な飲酒は『百薬の長』とされるが、心房細動に関しては、そうした結論は導かれなかった」としている。
心房細動は、脳塞栓症の主因となる不整脈の一つ。高齢男性に多く、厚生労働省の第4次循環器疾患基礎調査(2000年)では、70歳以上の男性の罹患率は4%以上となっている。
研究グループは、飲酒と心房細動リスクの関係を調査した09年末までの研究14件(コホート研究9件、症例研究4件、両側面から検討した研究1件)をメタ解析した。高摂取群の定義については、米国立アルコール依存症研究所(NIAAA)のガイドラインに従い、男性で1日2杯(エタノール換算24グラム)以上、女性で1日1杯(12グラム)以上とした。
このうち、「アルコールをほとんど摂取しない群(1日1杯未満)」を基準とする9研究を解析した結果、1日の摂取量が10グラム増えるごとに、心房細動の発症リスクが8%上昇。「摂取量とリスクの関係は、U字型やJ字型ではなく、直線関係で説明されることが分かった」という。虚血性心疾患などでは、適度な飲酒が発症リスクを軽減するとされるが、心房細動については認められなかった。
また、14研究それぞれのアルコール摂取の「最も多い群」と「最も少ない群」との比較では、最も多い群の心房細動の発症リスクは、最も少ない群に比べ1.51倍高かった。最も多い群の基準値は1日1.5―6杯以上、最も少ない群の基準値は非飲酒から1日40グラム(女性は20グラム)以下と各研究で違いがあったが、リスク算出に有意な影響はなかった。
解析対象がいずれも欧米の研究だったことから、研究グループでは、人種差に踏み込んで検討する必要があるとしているほか、酒の種類やどんな食べ物と一緒に飲んでいるかなどとの関連についても今後の課題としている。その上で、高齢化に伴う心房細動罹患者の増加を指摘し、「脳梗塞など合併症の重大さに比べ、発症要因に関する疫学的研究は十分とは言えない現状だ。今回の研究結果は発症予防に重要な知見を与える」としている。
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