厚生労働省の「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」は12月15日、14回目の会合を開き、厚労省が示した中間まとめ案を大筋で了承した。中間まとめでは、精神科病棟に入院する認知症患者のための退院支援・地域連携クリティカルパスの開発・導入や、認知症の早期から正確な診断が受けられる体制の整備などが提言されている。検討チームでは来年春をめどに、提言内容について、予算や報酬の在り方などに関する議論を開始する予定。
中間まとめでは、認知症患者への精神科医療の役割や、認知症患者が地域で生活できるようにする取り組みの前提として、「本人の思いを尊重し、残された力を最大限生かしていけるような支援をすること」と明記された。
また、認知症患者に対する精神科医療の基本的な考え方として、▽認知症の早期から、専門医療機関による正確な診断を受けられる体制の整備を目指す▽入院を前提とするのではなく、地域での患者の生活を支える。アウトリーチ(訪問支援)や外来機能の充実を図り、家族や介護者も含めて支援する▽BPSD(認知症の周辺症状)や身体合併症で入院が必要な場合、速やかな症状の軽減を目指し、退院を促進する▽地域で認知症患者を受け入れるシステムづくりを進めるため、介護保険サービスをはじめとする必要なサービスの包括的、継続的な提供を推進する▽退院支援・地域連携クリティカルパスを開発・導入し、入院中から退院後の生活への道筋を明確にする▽入院の継続が必要な患者に対し、療養環境に配慮した医療を提供する▽精神科の専門医療機関として、介護と福祉との連携、地域住民への啓発活動に積極的な機能を果たす―が示された。
具体的な方向性としては、認知症疾患医療センターの整備を加速することや、同センターと精神科医療機関、認知症サポート医、地域包括支援センターとの連携強化が盛り込まれた。BPSDを伴う患者に対する治療については、「必要最小限の適切な薬物治療を行えるようにすべき」と提言。こうした患者に円滑に医療を提供するため、日ごろから認知症患者や家族、介護者との関係を築く必要性がある点なども示された。
また、身体合併症などに伴い、認知症患者に他の専門医療が必要になった場合を想定し、「精神科医療機関にほかの専門診療科の医師が訪問診療を行うことや、精神科の医師がほかの医療機関に訪問診療するなど、医療機関間の連携を円滑に行えるような取り組みについて検討すべき」と提言。さらに、地域における診療連携を強化するため、精神科医療機関は地域住民、地域包括支援センター、介護事業者などと定期的に情報交換を行うべきとしている。
■現場への周知の必要性を指摘する声が続出
構成員からは中間まとめについて、「この内容を見れば、現場の行動も変化する」(長野敏宏・NPO法人「ハートinハートなんぐん」市場理事)、「都道府県の連絡会議などの場を利用し、説明してはどうか」(松本均・横浜市健康福祉局介護保険課長)、「これをどれだけ周知するのか。そして、どうやって実現していくのかが課題」(東憲太郎・医療法人「緑の風」理事長)など、医療や介護の現場に広く周知する必要性を訴える声が相次いだ。
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