素案では、重度の要介護者や医療ニーズの高い高齢者に対して給付を重点的に行う一方、要支援者や軽度の要介護者に対する給付について、「効率化と効果の向上を図ることを検討する必要がある」と提言。居宅介護支援サービスと介護予防支援サービスについては、利用者負担の導入を検討すべきとした。一方、地域包括支援センターが手掛ける要支援者に対するケアプラン作成業務は、地域の実情に応じて業務委託できるようにすべきとしている。
介護老人保健施設(老健)などについては、次期介護報酬改定で、「終(つい)の棲家(すみか)としての機能や、在宅復帰支援機能に注目した評価を導入する必要がある」と提言。特別養護老人ホーム(特養)の設置者については、社会医療法人も「開設することを可能とするべきである」としている。なお、特養のユニット型個室の利用者負担については、「社会福祉法人による利用者負担軽減や補足給付の拡充によって、その一部を軽減すべき」とした一方、多床室については、「低所得者の利用に配慮しつつ、減価償却費を保険給付対象外とする見直しが必要」とした。
認知症の人への対応では、専門の研修を受けた認知症サポート医を生活圏域で確保することや認知症疾患医療センターの整備が重要と指摘。さらに、さまざまな関係機関の調整役として、必要に応じて地域包括支援センターなどに専門的な知識を有するコーディネーターを配置することを検討すべきとした。
現在、実施されている介護職員処遇改善交付金については、現在の制度を継続するのではなく、「介護報酬改定により対応する方向で検討していくべき」と提言。公費負担割合の見直しや地域支援事業の財源構成、補足給付の公費化など、介護保険と公費の在り方については、「社会保障と財源の在り方全体の中での課題として、引き続き検討を行っていく必要がある」としている。
■「利用者側の意見を切り捨てた内容」―木間委員
委員からは、「国民の理解不足のまま、財源論による利用者負担導入が進められようとしている。居宅介護支援費の利用者負担導入には断固反対」(木村隆次・日本介護支援専門員協会会長)、「財源の問題だけで居宅介護支援費の1割負担を導入しても、利用者は納得しない。(導入を検討する前に)パブコメを取る必要がある」(北村俊幸・民間介護事業推進委員会代表委員)など、特に居宅介護支援費への自己負担導入に対する批判が続出。また結城康博・淑徳大准教授は、これまでの議論の内容について「財政一辺倒の議論に終始し、非常に残念。介護保険制度10年間の総括の議論もなされていない」と述べた上で、公費割合を6割に引き上げる必要性を改めて訴えた。一方、土居丈朗・慶大教授は財源論議に終始したとする批判に対し、「財源がなければ保険そのものが維持できない」と反論した。
さらに、齊藤秀樹・全国老人クラブ連合会事務局長は、素案全体の内容や記述について「反対多数だった議論の内容が、反対した委員が少数派だったようにまとめられている部分が目立つ」と指摘。木間昭子・高齢社会をよくする女性の会理事は、「これまでの議論の内容を整理したのではなく、利用者を代弁した委員の意見を切り捨てた内容」と激しく批判した。