厚生労働省の「今後の介護人材養成の在り方に関する検討会」(座長=駒村康平・慶大教授)は1月20日、9回目の会合を開き、厚労省が示した同検討会の報告書案を大筋で了承した。報告書には、介護福祉士国家試験における実務経験者の受験資格として450時間の研修のほか、介護福祉士養成施設卒業者に対する国家試験受験の義務化などが盛り込まれている。これを受け厚労省では、関連法案を24日召集の通常国会に提出する方針。
■「初任者研修修了者→介護福祉士→認定介護福祉士」の養成体系
報告書では、「初任者研修修了者→介護福祉士→認定介護福祉士(仮称)」を今後の介護人材の基本的な養成体系にすると提言=図1=。このうち、初任者研修については「現在のホームヘルパー2級相当の研修。在宅・施設を問わず、介護職として働く上で基本となる知識・技術を習得する内容」と定義している。
また、介護福祉士の資格を得るには、必ず国家試験に合格する必要があるとした上で、受験資格として、▽介護福祉士養成施設で、1800時間の研修を受講(養成施設ルート)▽介護現場で3年以上の実務経験を積んだ上で、実務者研修を受講―のいずれかを満たす必要があるとしている。介護福祉士養成施設卒業者に対する国試受験の義務化や実務者研修については、2015年度に施行し、16年1月の国試から適用する。
■研修時間の「読み替え」を提言―実務者研修
実務者研修については、450時間分の研修を義務付けている。ただ、ホームヘルパー2級修了者には、その研修で対応している時間分を免除。さらに、地域の社会福祉協議会や事業者団体、人材育成に熱心に取り組む事業者などで行っている研修のうち、一定のレベルや内容を満たしているものについては、実務者研修の研修時間として「読み替えが可能になるようにすべき」とも提言した。
ホームヘルパー1級研修と介護職員基礎研修、実務者研修の一本化も盛り込まれた。厚労省関係者は「介護職員基礎研修などを修了した人の場合、その研修で対応している時間分は(実務者研修から)免除する。医行為など、対応できていない部分だけ研修を受けてもらうことになる」としている。たんの吸引など医行為に関する研修は、「450時間の時間内に盛り込む方針」という。
■受講費用の貸与や代替職員などの支援策も
実務者研修の受講期間については、「数年間かけて少しずつ修了すればよい」と明記。また、働きながら受講する介護職員を支援するため、▽通信教育の積極的な活用やインターネット、テレビ放送の利用▽介護福祉士養成施設はもちろん、社会福祉協議会や事業者団体など、多様な主体での研修の実施▽通信教育のスクーリングを地域の団体などに委託できる仕組みづくりの検討▽研修中の人材に代わる代替職員確保のための支援策の実施▽受講費用の一部を貸与し、一定の要件を満たした場合は返還免除とするなど、受講費用の支援策を講じる―などの対策が盛り込まれた。
■「認定介護福祉士」を構築へ
介護福祉士資格を取得した後のステップアップとして、「認定介護福祉士」(仮称)の構築も提言されている。認定介護福祉士について、「介護福祉士資格を取得後、一定の実務経験を経て、幅広い知識と技術を身につけ、質の高い介護を行い、他の現場職員を指導できるレベルに達した人材」と明記。その認定について、職能団体が主役となって行う仕組みを設けていくとしている。このほか、質の高い介護サービスの提供と介護職員の確保を両立させるため、「介護職員に占める介護福祉士の割合が5割以上」を当面の目安とすることなども盛り込まれた。
■国試の回数や試験会場の増加を望む声が続出
構成員からは、「受験回数が年1回では少ない。また、受験できる場所も増やすべき」(河原四良・UIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン政策顧問)、「できれば各都道府県で1か所は受験できる場所を確保してほしい」(廣江研・全国社会福祉施設経営者協議会介護保険事業経営委員長)など、国試の受験機会や試験会場を増やすべきとする意見が続出。また、「この報告書が出たからといって、現場の不安が払しょくされるわけではない。(ステップアップなどに合わせてどのくらいの)賃金の確保ができるのかがはっきりしないと、人材確保にはつながらない」(中尾辰代・全国ホームヘルパー協議会会長)といった声も上がった。