アルツハイマー病の大規模臨床観察研究「J-ADNI」で主任研究者を務める岩坪威・東大大学院教授は1月15日、日本成人病(生活習慣病)学会の学術集会で講演し、アルツハイマー病治療の今後について解説した。この中で、対症療法を超えた根本治療には、症状が現れる前の段階から、病因たんぱく質とされるアミロイドβの蓄積に着目した「超早期治療」が重要だと強調。アミロイドβを標的とする治療薬の開発や発症予測法の確立が必要だと述べた。
アルツハイマー病の発症には、脳内のアミロイドβの蓄積が大きくかかわるとされ、この蓄積を防ぐ治療薬の開発研究も進められている。
岩坪教授は「アミロイドβの蓄積は、認知機能障害が発症するよりも10年以上、先行して始まっている」とし、「軽度の症状や無症候の段階でアミロイドβを"たたく"先制医療」を開始するのが理想的だと指摘。そのためには、PET画像やバイオマーカーで蓄積状況を診断するなど、アルツハイマー病の進行を客観的に評価する手法を確立することが求められると述べ、進行度の評価基準づくりを目指すJ-ADNIの研究意義を説明した。
また、J-ADNIのこれまでの成果として、「(アルツハイマー病の危険因子とされる)ApoE4型遺伝子を持つ人は、若いうちからアミロイドβ蓄積が見られる」「無症候の人も2割程度はアミロイドβ陽性」などのデータを報告。先行する米国のADNIでは「アミロイドβ陽性で、海馬の委縮速度が60%加速する」との知見が得られていることなども紹介しながら、「J-ADNIの成果をベースに、無症候者に対する薬剤介入研究をやりたいという構想を持っている。(アミロイドβなどの発症因子の)長期コントロールによって、アルツハイマー病の発症を遅らせる、あるいは未然に防ぐ治療を行いたい。これが目下の大きな課題だ」と述べた。
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