厚生労働省は12月8日に開かれた「高齢者医療制度改革会議」(座長=岩村正彦・東大大学院法学政治学研究科教授)に、昨年11月からの議論を踏まえた最終取りまとめ案を示した。同案では、多くの高齢者の加入が見込まれる国民健康保険(国保)の財政運営を全年齢で都道府県単位化する時期について、新制度施行(2013年予定)から5年後の18年を目標とし、法律に明記することを掲げている。
最終取りまとめ案によると、サラリーマンである高齢者や被扶養者は被用者保険に、それ以外の自営業者や退職者など地域で生活している人は国保に加入する。
国保の財政運営については、第1段階で75歳以上について都道府県単位化し、環境整備を進めて第2段階で全国一律に、全年齢での都道府県単位化を図る。「都道府県単位の運営主体」については、「市町村による広域連合ではなく、都道府県が担うことが適当であるとの意見が大勢」と明記。「都道府県」が財政運営と標準(基準)保険料率の設定、「市町村」が賦課・徴収や保険給付などを行うといった事務分担で共同運営する。
費用負担では、▽医療費の動向などを踏まえながら、定期的に公費のあり方を検討する仕組みとすることを法律に明記する▽75歳以上の低所得者の保険料軽減の特例措置を段階的に縮小する▽70-74歳の患者負担を新制度施行後に70歳に到達する人から順次2割にする―ことなどを盛り込んでいる。
議論では、委員から財源確保の問題を指摘する意見が相次いだ。神田真秋委員(愛知県知事)は、「財源論が欠如している点が最大の問題だ。持続可能な医療保険制度をどう構築するかは財源の確保に懸かっている」と強調。公費、特に国費投入についての今後の見通しが示されていないとして、「とても残念だ」と批判した。鎌田實委員(諏訪中央病院名誉院長)は、財源問題について検討すべきとの文言を取りまとめに盛り込むことを提案した。
これを受け宮武剛委員(目白大大学院生涯福祉研究科教授)は、「財源の確保策をきちっと政府が考えてくれという要望を書くのは、何の遠慮も要らないと思う」と同調。一方、同会議では制度の枠組みに関する議論が主だったが、「国民は枠組みの中でどんな医療が提供されるかを期待している」と述べ、別の場で医療サービスについて議論する必要性も指摘した。近藤克則委員(日本福祉大社会福祉学部教授)は、「受けられる医療の質、必要な医療が抑制されないかどうか、健康格差の問題もぜひモニタリングしてほしい」と述べ、その必要性を盛り込むよう求めた。
細川律夫厚労相は最後に、神田委員の発言を受け、「都道府県の立場としては、やはり財源問題が一番大事だということも当然理解できる。そのことをどのように取りまとめに入れることができるか、(20日の)最終回までにどのように表現できるかを検討していきたい」と述べた。
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