認知症ケアの専門的な知識と技能を備えた「認知症ケア専門士」について、患者を抱える家族の8割余りは、その存在自体を知らないことが、日本認知症ケア学会の調査で分かった。一方、家族の8割近くは認知症に対する専門的なケアが必要と感じていることも明らかになった。
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会が認定する更新制の資格。2005年から認定が始まり、「資格保持者は、既に各施設や在宅ケアの現場で専門技術者として活動している」(同学会関係者)という。この資格がどの程度認知されているかを把握するため、同学会では昨年1月8日から18日にかけて、認知症患者を抱える家族に対するアンケート調査を実施。1031人から有効回答を得た。
「認知症ケア専門士について知っているか」という問いに対しては、「初めて聞いた」と回答した人が82.4%に達した。「聞いたことがある」は14.0%、「知っている」は3.6%にとどまった。
その一方で、「認知症ケアには専門的資格が必要か」という問いに対しては、「必要」という答えが77.6%で、「必要ない」(22.4%)を大きく上回った。調査を企画した日大の北村世都助教は、「今年中には認知症ケア専門士に認定される人は2万人を超える。専門的なケアを求めている家族が、専門家が存在していること自体を知らないというのは、あまりにもったいない」と指摘。また、同学会理事で桜美林大の長田久雄教授も、「認知症ケア専門士の役割や位置付けを明確にした上で、もっと家族にPRする必要がある」と話している。
調査では、認知症ケア専門士の資格を取得した人や、介護関連の施設や事業所の経営者に対するアンケートも実施され、認知症ケア専門士から7234件、事業者からは1050件の有効回答を得た。このうち、認知症ケア専門士への「資格を取得した後の変化」に関する質問(複数回答)では、「(認知症について)学習するようになった」(81.6%)、「知識が増えた」(72.2%)など、資格の取得が本人の意識や行動に前向きな変化をもたらしたという回答が多数を占めた。一方、「給与が増えた」(27.0%)、「(職場における)連携が取りやすくなった」(30.8%)など、資格が職場環境によい変化をもたらしたとする回答は、いずれも全体の半数以下だった。また、事業者に対する「採用の際、認知症ケア専門士の資格を考慮するか」との問いでは、考慮するとの回答が54.5%と過半数に達した。
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