認知症の高齢者が行方不明になった際、警察や消防、介護関連施設や民間企業、地域住民が連携し、その早期発見に努めるネットワーク(徘徊・見守りSOSネットワーク)を整備し、稼働させている自治体は1割にも満たないことが、11月16日までのNPOシルバー総合研究所の調査で分かった。調査では、全国の地域包括支援センターの半数近くは、認知症の高齢者が行方不明となった事例を経験していることも明らかになった。
NPOシルバー総合研究所では、2008年11月から昨年10月にかけて、全国の自治体(1951か所)に対し、同ネットワークの有無や稼働状況について、アンケート調査を実施。同時に、全国の地域包括支援センターに対し、行方不明になる恐れのある認知症の人の人数や、実際に行方不明になった事例の有無についても、アンケート調査を行った。
ネットワークの稼働状況については、回答があった881の自治体のうち「整備済み」は245か所。このうち「活発に稼働している」と回答した自治体は57か所、「あまり稼働していない」は78か所、「稼働していない」は14か所だった。
同研究所では、アンケートに回答しなかった自治体でのネットワークの有無や稼働状況ははっきりしないとしながらも、「ネットワークが現実に稼働している自治体は、全自治体の1割にも満たないのではないか」と分析。また、ネットワークがあっても稼働していない例が確認されたことについては、「活動の中心となっていた自治体職員が異動した後、機能しなくなったネットワークが多い。また、市町村の『平成の大合併』が進んだ結果、自治体の中で管理や運営の責任の所在が不明確になったことも影響しているようだ」としている。
地域包括支援センターに対するアンケートには、1505か所のセンターから回答があった。このうち、行方不明になる恐れのある利用者がいると回答したのは約6割(904か所)に達し、実際に利用者が行方不明になった事例を経験したセンターも半数近く(702か所)あった。中には、徘徊の途中で誤って新幹線に乗車してしまった例や、10年以上も行方が分からないままの利用者がいるセンターもあったという。
同研究所では、「ネットワークが整備されても、認知症啓発が進んでいなければ、ネットワークの存在が伝わらない。ネットワークの整備と認知症啓発は、いわば車の両輪であり、広域連携を含めた自治体による体制の整備が急務」と提言している。
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